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“84 Charing Cross Road”by Helene Hanff

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⭐️⭐️⭐️⭐️(4つ星)

今回は読みたいなと思っていたこの本が図書館で見つかったので、借りて読んでみました。短い手紙形式で書かれていて、お話自体も短いのでサクサクと読めます。この本は1970年に出版され、今尚、本好きの間では割と有名な本のようです。そしてこれは読み終わってから知ったのですが、劇や、テレビや映画化もされているようです。しかも映画はあのアンソニーホプキンスが出ているということなので、これはぜひみてみたいと思います。

 お話はニューヨークに住む女性ヘレネがロンドンにある古本屋Marks & Co.から本を買うために一通の手紙を送るところから始まり、1949年から20年に渡る彼女とMarks & Co.で働く従業員(特にフランク)や家族との手紙を通して深まる友情が手紙形式で書かれています。私たち読者は彼らの手紙交換を通して、一緒に彼らを知り、まるで自分も手紙交換の一員であるかのような錯覚に陥ることになります。

星は4つにしました。プロットツイストやドキドキ感はゼロですが、手紙を通して、そして本を題材に2つの国の人たちの友情が少しづつ深まっていく様子がなんともほのぼのとしていて、人の優しさとか、純粋さとか、時代なども感じ取ることができ、読み終わった後に心が温まるというかふっと笑顔になってしまうような本でした。情熱的な愛ではないけど優しい人間愛を感じることができます。

主人公のヘレネはニューヨークに住むフリーランスのライターで、手紙を読んでいるうちに彼女が冗談好きではっきり物を言う、時に皮肉屋さん的な面白い女性だということがわかります。一方ロンドンの古本屋で働くフランクはとても真面目でヘレネとは正反対のタイプの男性だと思われます。この二人が手紙を通して心を開いていく様子がとても微笑ましいのです。ヘレネの手紙に返事を出すのは大抵いつもフランクの仕事ですが、Marks & Co.で働く人々はみんなヘレネの手紙を読んでいて、みんなヘレネと話したいと思っているので時には他の人もフランクに内緒で手紙を書いたりしているのもなんだか微笑ましいところです。

そして、話は1949年からの20年間なので、手紙を描き始めた最初の頃のイギリスの状況も書かれていてそこもとても興味深いとおもいます。色々な食料がなかなか手に入らなかったり、戦後の物不足感がひしひしと伝わってきます。そして、この時代はもちろんインターネットもなく、国際電話もきっと今ほど普及してないので、連絡方法は手紙と言うことになります。この手紙というところも今の時代から考えるとなんだか微笑ましいと思ってしまうのです。手紙を出して届くまでにやっぱり日にちがかかるけどだからこそ手紙を受け取った時の嬉しさも増すのだと思います。私も子供の頃は本当によく手紙を書いていました。引っ越した友達と毎週の様にそしてほぼ日記の様な手紙を何年も何年も書いて送りあいました。手紙をポストに見つけるといつも本当に嬉しかった。電話もできたけど私はやっぱり手紙方が断然好きでした。今でも電話はあまり得意ではありません。特に感情が入るとうまく話ができなくなる性格なので、真面目な話の時は考えを頭でまとめてから手紙を書く方が私にとってはうまく伝えられる方法だと思っています。

話が少しずれましたが、『84 Charing Cross Road』は全ての人にお勧めできる本ではないけど本好きさんや手紙好きさんにはお勧めできる作品だと思います。私が借りたバージョンの本の中にはお話の続編である『The Duchess of Bloomsbury Street』も収録されており、ヘレネが1971年に念願のロンドンを訪れ、手紙を通して知り合った人たちと実際に会ったり、この本(84Charing Cross Road)を通して知った人たちとのロンドンでの日々が日記形式で書かれています。こちらも人と人との交流が描かれていて、作者の性格もよく出ているし、彼女はきっと知らず知らずのうちにたくさんの人を惹きつけてしまう人物なのだろうなというのがよくわかります。裏表のない機知に富んだヘレネに魅了されるひとは年齢、性別を問わずたくさんいたであろうことが彼女の文章からもわかりました。

『84Charing Cross Road』も『The Duchess of Bloomsbury Street』もどちらも人の温かさや優しさを感じることのできる作品であると思います。これは今よりも40年も50年も前の話だからなのか、それとも現代でもこの様な優しさは実在するのかはわかりませんが、人を信じることが少しづつ難しくなっていくこの世の中でこれから先も人の温かさや優しさを信じていたいという気持ちにさせられました。時代は変わっても私たちが求めるものは変わらないのではないでしょうか?友情や愛情、また他人に対する優しさを求めるのが人間であり、個人的にはそれが世の中をよくしていく鍵だと思っています。

話が大きくなってしまいましたが、この本はほのぼのとした読後感が欲しい時にさくさくと読める本です。興味があったらぜひ読んでみてください。ちなみに日本語訳も出ている様なので、興味のある方はそちらもどうぞ。そしてヘレネがロンドンを訪問する続編もぜひどうぞ。

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