洋書コーナー

“The Maid” by Nita Prose

⭐️⭐️⭐️(3つ星)

今回は去年か一昨年あたりにみんなが読んでいた”The Maid” by Nita Proseの感想です。こちらの作品は2022年1月に出版されました。現時点(2024年)ではシリーズ化されてこれの他にも2冊同じキャラクターで続編が出ているようです。また、映像化の話もあったようですが、これは実現されるのかどうかはわかりません。

あらすじ。ホテルでメイドをしているMollyは最近たった一人の家族であるおばあちゃんを亡くし、寂しい日々を過ごしています。メイドであることにプライドを持つMollyはメイドとして常に完璧な仕事をすることに徹しています。がある日自分の担当する部屋で男性が死んでいるのを見つけます。この男性はこのホテルのVIPでMollyはいつもこのVIPの部屋を掃除するので、この男性の奥さんとも少し交流があります。本にははっきりと書かれていませんが、Mollyの言動から彼女は自閉症スペクトラムの症状のようなものが見受けられます。そのため言動がちょっと人と違うことがあり、それにより周りからおかしな目でみられたり、空気が読めないことが多々あります。そのためにMollyは濡れ衣を着せられ、警察から容疑者として捕まってしまいます。そこから事件の真相とMollyの濡れ衣を晴らすために様々なやりとりが繰り広げられます。

星は3つでした。ミステリーだと思って読み始めたので、普通のミステリーとはちょっと違うというか確かにミステリーなんだけど怖い感は全くなく、どちらかというと結末がすでにわかっていながら心温まるお話を読むという感じがしました。もしかしたらこれが俗にいうコージーミステリーなのでしょうか?コージーミステリーなるものを読んだことがないので良くわからないのですが、私のイメージ的にはこうゆう作品がコージーミステリーと呼ばれるものなのかなと思いました。全体的にとても読みやすいし、犯人がだれなのかとかMollyはどうなってしまうのかという興味もあって読み終えることができましたが、ハラハラドキドキという感覚とは違った感覚でした。普段はハラハラドキドキ系のミステリーを読んでいるのでちょっと拍子抜けというか安心して読める感がありました。

しかしその中にも主人公がどんどん悪い方向へ行ってしまうところがもどかしくて『あー、もう!』と思う場面が多々ありました。これはMollyが純粋で人を疑わないがために起きてしまうことなのでしょうがないのですが、はたから見ていると明らかな嘘やなんか変だなという感覚を見抜くことが難しいMollyにはどうにもできないのです。周りの空気を読むことが苦手だったり、人の表情などから色々なことを判断するのが難しい人々は常にこのような感覚なのかなと思うとそのような問題を抱えている人たちは生きているのがすごく大変だなと思いました。話の中のようにそれをいいことにその人を騙したりする人も現実にいることでしょう。

昔はKYなんて言って空気の読めない人のことをバカにしたり、笑ったりする人が多かったと思います。現在はもっと自閉スペクトラム症のことについて研究がされ、世の中の人も理解が深まってきていると思います。作者は作中ではっきりとMollyがスペクトラム上にいるということは言ってないのですが、このような本や映画やテレビなどで社会的スキルに欠けるキャラクターを書くことによりもっと理解が増すことはとてもいいことだと思います。自閉スペクトラム症であるないに関係なくとも私たちは自分と感覚の違う人を軽視したり、却下することが多々あると思います。自分も含め、自分と感覚や意見の違う人にあった時に一度立ち止まり、その人の立場に立って考えてみることも重要だなと思いました。

本の最後の方にあったこの一文が印象に残りました。“Now I understand. My truth is not the same as yours because we don’t experience life in the same way.” これを読んだ時に『確かに!』と思いました。私の真実は他の人の真実ではないこともある。というのは昔、Sekai no owariというバンドの歌でDragon Nightを聞いていた時に僕の正義は必ずしも僕の嫌いな彼の正義じゃないのかも(意訳)みたいな歌詞があって、その時に初めて『おー!そうだよねー。』て思ったんだよね。戦争とかでもどちら側も自分の正義(真実)のために戦っているのであってそれは自分が今まで生きてきた経験により自分の真実は他の人の真実と異なるよねっていうことになる。そう考えると世界が仲良く生きていくって色々難しいなあと思う今日この頃です。

もしこれがコージーミステリーだったら私はあまりコージーミステリーが好きではないのかなと思ってしまいました。この作品は色々な要素が詰まっていて心温まるいい話だと思うけど個人的にミステリーはドキドキハラハラを求めてしまうので、このジャンルは私にあっていないのかもしれません。というよりか普通のミステリーだと思い込んで読み始めてしまったのが良くなかったのだと思います。最初からコージーミステリーとして読んでいたらもっと評価は高かったのかもなと思いました。でもこの作品の最後は驚きがあって、そこは予想してなかったのでとてもよかったです。映像化されたら見てみたいなとは思いました。映像化するときはミステリーだけどちょっとコメディーっぽくしてくれたらいいなと思いました。

The Maidはミステリーあり、涙あり、笑いありそしてなによりMollyの成長を垣間見ることのできる心温まるコージーミステリーでありながら社会的スキルに欠ける人々が世の中で生きることの難しさも描かれているいいお話だと思います。この話を読む人は誰もがMollyを応援し、彼女の幸せを願うことでしょう。コージーミステリー好きの方にはぜひオススメしたい本でした。

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