“Kim Jiyoung, Born 1982” by Cho Num-Joo

(⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️5つ星)
今回はCho Num-Jooの”Kim Jiyoung, Born 1982″をご紹介します。実は日本語『82年生まれ、キム・ジオン』を読んだのですが、いろいろな言語のバージョンが出ている作品なのでこのブログ”洋書コーナー”で紹介することにしました。この本は2016年に韓国で出版された小説で韓国で話題になり、その後英語や日本語など16ヶ国語以上の言語に翻訳され販売されているようです。
以前から興味があり、ぜひ読みたいと思っていたところに日本語バージョンを偶然見つけたので、読んでみることにしました。
あらすじは1982年生まれで33歳、女児の母で専業主婦の主人公Kim Jiyoungがある日突然彼女の母親や友達が乗り移ったような奇妙な言動をし始めるところから始まり、読者は彼女の幼少時から現在に至るまでの女性目線での人生を振り返りながらなぜ彼女がそうなってしまったのかを一緒に探っていくという内容のお話です。
星は5つです。特に私が女性だからなのかもしれませんが、Kim Jiyounの人生はきっと多くの日本人女性も共感できる部分がたくさんあると思います。彼女は1982年に生まれたので私よりも若い設定なのですが、それでもその時代にまだ韓国でこれだけの男女の格差があったり、男児を産むことに対する考え方や男児と女児の育て方の違いがあることに驚きを感じました。彼女の人生を読み進めていくうちに人生のありとあらゆる場面において自分が女性だという負のレッテルを何度も何度も何度も貼られているような気持ちになり、やるせなくそして切なくなりました。
自分が女だからというだけでうける不公平な出来事に直面するたびに少しづつ壊れていくJiyoungの心はこうして一冊のしかも短い本として読むと手に取るようにわかるのに生まれてからずっと何十年もかけて壊れていく私たちの心は周りもそして自分自身でさえも気づいていないのだろうなと思い知らされました。社会で当たり前のこととしてまかり通ってしまっていることに私たち女性自身も不満を感じながらも(もしくは当たり前と思い込みすぎて不満を感じてもいいということさえ気づかなかったこと)声に出さずにそのままやり過ごしてしまっていたことにも問題があり、おかしいと思うことに対して声をあげていくことはとても重要であることを改めて感じました。変化はすぐには訪れないけれど社会は常に変化していて、ジェネレーション単位で物事みていくと不可能だと思っていたこともかなりの確率で変化してきていることに私たちは気づき、そして希望を持つことが大事なのです。
この作品はハリウッドのMe Too Movementが注目を浴びていた時期とも重なってより多くの人の手に届くこととなり、その影響は必ず今後の社会に反映されるものだと私は信じています。だからこそこのような作品はとても重要であり、この本を書いた作者に私は感謝と尊敬の念を持っています。この本はフェミニスト小説だと言われたりすることもあり、きっと作者はこの本を書くことによりたくさんの嫌な目に合って来たと思います。でもこの本を書いて出版した彼女の勇気に脱帽です。
私は女性だからこの本がすごく良かったと思ったのですが、男の人が読むときっとまた違った感想になるかと思います。この本がいいなと思うのはあくまで小説であり、説教じみた感じにならずに淡々と彼女の人生における疑問点を提示している感があるところです。女性の私でもはっとさせられる部分があったこの本は男性が読むときっとたくさんの気づきがあると思います。できればたくさんの男性にこの本を読んでもらいたいなという気持ちになりました。それは男性が悪いとか男性を責めるというわけではなく、単に女性として生きていくことを少しでも垣間見る機会になって、その後の生活でふと思い出してくれるだけで少しづつ世の中変わっていくのではないかと思うからです。どちらかというときっと男性に理解してもらいたいという気持ちが私の中であるからだと思います。
本の一場面で親戚から子供を催促され、旦那さんがそろそろ子供を作ってもいいかもねって軽くいう場面でJiyoungは女性は子供を作ることによって、身体的にも精神的にもキャリア的にも様々な変化を受け入れたり考えたりして失うものがたくさんある中で、男性は子供を作ることで失うものはそれほどないという類のことを言っていて、そう言われれば確かに男性は子供を作っても割と今まで通りの生活を続けることができるんだよねという今まであまり考えていなかった事実にびっくりというか改めて考えさせられました。そして”僕も手伝うよ”という旦那の何気ない一言に”手伝う”って何?あなたの子供でしょ?と思う場面があり、確かにと私も改めて思いました。旦那さんはきっとあまり考えずに”助ける”という言葉を使ったのでしょうがそこに子供が産まれたら子育てメインは女性で、男性は助けるものという社会的な背景がうかがわれます。夫婦の役割は夫婦間で決めるものであり、お互いに話し合って決めた結論であるべきで、子供ができたら話し合いもせず当たり前のように男女の役割が決まってしまっていた時代は少しづつ変わっていくべきだと思います。お互いに子供ができたら自分はどうしたいのかきちんと話し合った上でお互いが納得のいく人生を歩めることが理想ですが、まだまだそれが簡単にできる社会が整っていないのかもしれません。
この本がきっかけで少しでも女性が生きやすい社会になっていけばいいなと一女性として思います。作者の意図は色々あると思うけど私はこの本が男女差別の糾弾ではなく、男性にも女性の気持ちや憤りを少しでも理解してほしいという願いが込められているような気がしました。そして私自身、読後に色々と考えるきっかけを与えて貰いました。
個人的には本の最後にある精神科医の一言に絶望を感じながらも自分の親や祖母の世代の女性を振り返ってみると少しづつでも女性にとって住みやすい社会は実現してきているという事実に希望を捨てず次の世代がもっと良くなるように私たちが少しづつ変化の努力をしていかなければと思いました。
