“Piranesi” by Susanna Clarke

⭐️⭐️⭐️⭐️(4つ星)
今回はSusanna Clarkeの”Piranesi”をご紹介したいと思います。一言でいうとなんとも不思議な作品だというしかないですが割と好きです。
この本は2020年に出版され、ブックチューブでもかなり紹介されていた本です。多くの人が変わった本だと言っていたので、その認識はあったのですが、Piranesiが大きな迷路のような宮殿に住み、そこを歩き回るみたいな話という以外は内容はほぼ知らずに読み始めました。個人的にこの作品は特に何も知らずに読み始めた方がいいと思います。
あらすじはなんとも説明しにくいのですが、Piranesiという人が大きな宮殿のような場所に住んでいて、その宮殿は海の満ち潮によって水が入ってきたり、鳥が訪れたり、たくさんの彫刻像が置いてあるところでPiranesiはその宮殿の様子を観察し、丁寧にジャーナルに記録しています。彼の他にはPiranesiがThe Otherと読んでいるもう1人研究者のような人がいて、Piranesiは週に1−2回その人と会ってミーティングを行います。最初、読者はPiranesiがどこにいるのかそしてなぜそこに住んでいるのかなど全くわからない状態で読み始め、徐々にその理由が解明されていくという内容です。本を読む前はこの表紙のミノタウロス(?)が主人公だとばっかり思っていたのですが、ミノタウロスは彫刻の一つで主人公のPiranesiは普通の人間でした。
星は4つです。きっとこの本は好き嫌いが分かれる本だと思います。とにかく不思議な雰囲気の本で、何が現実は何が夢なのかわからないような感じで読みながらも自分が夢を見ているかのような錯覚に襲われると言えると思います。物語の半分までは割と退屈でなかなか話が進まず、宮殿の描写が多いので飽きてしまったのですが、半分ぐらいから物語がどんどん進み始めて早く先が知りたくてすぐに読み終わりました。きっと結末に納得が行かないという人もたくさんいるんじゃないかなと思いましたが、私はこの結末でよかったんじゃないかなと思いました。
なぜ私がこの話を好きかという一つの理由に自分の傾向として夢のような不思議な世界と現実の世界が織り混ざったような世界観が好きだからだと思います。ファンタジーだったら思いっきりファンタジーの世界というよりもどこが現実世界も垣間見れるような話の方が共感もできるし、想像しやすいというか、もしかしたら?という気にさせてくれるところが好きなのだと思います。
もう一つの理由はきっとPiranesiの性格だと思います。Piranesiはとても優しく、素直で、時には見てる方がやきもきする時もあるけどみんなに好かれるキャラクターだと思います。Piranesiの子供のような振る舞いは読者にPiranesiを守りたくなるような感情を起こします。しかし読者は外から見ているだけでPiranesiに何もしてあげられないのでドキドキハラハラしてしまうのです。
この本は多分一回読んだだけでは理解できない部分がたくさんある本だと思います。人間のサイコロジーの観点から読んでもきっとたくさんの発見があると思うし、心理学に詳しい人ならもしかしたらこれはこうなのかもしれないという解読もできるかもしれません。私は心理学に詳しいわけではないのでもしかたらこうなのかもしれないけどもしかしたら本当なのかもしれないという感じでなんというかどっちつかずな感じで読み終えましたが、読後感はなんだか不思議な夢から覚めたような感覚でなぜか悲しい気持ちになりました。
とにかくユニークな本で、読んでる途中も読んだ後もふとPiranasiのことそして不思議な世界のことを考えてしまうことがあります。読んだ後にも読者に様々な感情を起こしたり、いろいろ考えさせてしまう本は私にとってとてもいい本だと思います。考えれば考えるほど5つ星にした方がいいのかな?と思わされますが、最初の半分がやっぱりあまり面白くなかったのでとりあえず4つ星にしておきます。(本当は4つ半星にしたいのですが半分の星が出てこないので。。。)
Susanna Clarkeは何にインスピレーションを得てこの本を書いたのかがとても気になるところです。彼女の頭の中はたくさんの不思議な複雑なことが起こっているのだろうなと思いました。彼女のインタビューなどを探して読んでみたいと思います。また彼女のもう一つの作品”Jonathan Strange and Mr Norrell”も機会があったら読んでみたいです。
また驚いたことに日本語訳が出版されていました。この本は翻訳されていないだろうなと思いながら検索したので見つけた時は驚きました。また英語版の表紙もいいですが、日本版の表紙がすごく綺麗でよかったので興味のある方はみてみてください。
では変わった本が好きな方はぜひピラネシを読んでピラネシの世界へ行ってみてください。
最後にこの本の中で気に入った文章を書き留めておきます。”Perhaps that is what it is like being with other people. Perhaps even people you like and admire immensely can make you see hte World in ways you would rather not.” P228 Piranesi, Susanna Clarke
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