“Leave The World Behind” by Rumaan Alam

⭐️⭐️⭐️(3つ星)今日は2020年に出版されたミステリースリラーで2023年にネットフリックスにて大物俳優主演で映画化された”Leave The World Behind” by Rumaan Alamです。内容をあまりよく知らずに読み始めたのですが、ちょっと怖い系ということは知っていたので表紙の鹿の絵からしてなにか自然界と人間の戦いみたいな話かなーと思いながら読み始めました。こちらの作家さんのお名前は正直聞いたことがなかったし、この本に関してもブックチューブで昔誰かが話していたようないなかったようなというぐらいの記憶しかありませんでしたので特に期待もなく先入観なしに入れたと思います。
あらすじはハンプトンのエアビーに休暇できている4人家族が都会と人ごみを離れ、自然の中で素敵なお家での休暇を楽しんでいる時に急に夜中に少し年上のカップルが家を訪れるところから始まります。このカップルはこのエアビーが自分たちの家で、いつもはマンハッタンに住んでいるのだけど今日はマンハッタン全体が停電になったので、ハンプトンのこの家に泊まった方が安全だと判断し、来たと説明します。しかし、電話もインターネットも使えない状態で彼らの言っていることが事実であるかも確認することができません。果たしてこの家族の運命やいかに!という感じのお話なのです。
今回の星は3つです。読み始めた最初の数ページはなぜか難しい単語が多く、慣れるのにちょっと時間がかかりましたが、この年上カップルの登場あたりからどんどん引き込まれていき、難しいという印象も消えていきました。この本の冒頭あたりのカップルが夜中に訪ねてくるあたりはすごく怖かったのを覚えています。私もエアビーを使うことがあるのでもし自分がこの状況に陥ったらどう行動するだろうなどと考えてしまいました。まず、夜中にドアベルがなるというのがすでに恐怖です。そして周りに誰も住んでいない場所で誰にも助けを求められないというのも怖いです。エアビーを選ぶ時に静かで周りに人がいなくて自然の中ってゆっくりリラックスしたいなどと思うことも多々ありますが、あまりにご近所から離れているのも考えものだなと思いました。
そしてこのカップルが本当にオーナーなのかどうなのかがはっきりと確認できないまま、マンハッタンにそして世界に何か起こっているのかもわからないまま話は進んでいきます。最初は設定も面白いし、なにが起こっているのかよくわからないところが怖いし、突然訪れるカップルもなんか怖いしですごく話に引き込まれ、これは!と期待大でしたが、途中が少しゆっくりだったのと最後の結末が好きじゃなかったというのが3つ星の原因だと思います。ネタバレになってしまうので結末はかけないのですが、個人的には最後が不満足だったのが残念です。本は241ページと割と短めなのでそれほど時間をかけずに読めると思います。
ひとつ感心したのは作者の描写がすごく上手だなと思いました。例えばエアビーに着いた時にその家がすごく綺麗で手入れが行き届いていて、裕福な人たちの持ち物だということを説明している文の一部に “Some efficient hands had been here, rolled up the blinds, turned down the thermostat, Windexed ever surface, run the Dyson into the crevices of the sofa, picking up bits of organic blue corn tortilla chips and the errant dime.”という部分があるのですが私がうまいなと思ったのはこの”Dyson”と”Organic blue corn tortilla chips”のところが微妙に裕福であるということを強調しているように思えるのです。このような明らかではない表現の使い方が面白いなと思いました。(作者が意図してこの表現を使ったのかどうかは不明ですが、私は個人的に作者が意図的にこの描写を使ったのではないかと憶測しています。)
物語的にはちょっと物足りない印象が残りましたが、このような状況になった時に自分はどうするだろうかと考えてみるのも興味深かったです。何か大きな災害などが起きたときにテレビやインターネットがなく情報が入らない状況の場合自分は情報を得るために自分からどこかに出向いていくのかそれとも情報が自然に入ってくるまでそれまでの生活を続けて待つのか。何が起こっているかわからない状況はとても不安で、真実を知りたいという気持ちが強く出てくると思いますが、同時に何が起こっているかわからないのにわざわざ危険かもしれないところへ出向くようなことはしたくないという気持ちがあるのも正直な気持ちです。
また登場人物ほぼ全員が好感の持てないキャラクターでそこが人間味があると言えばその通りなのですが、ちょっとイライラするポイントでもありました。唯一、好感の持てたのはGHというキャラだけでした。彼には好感は持てるものの自分とは違う性格なので共感はあまりできませんでした。共感の持てるキャラクターがいると物語がグンと身近に感じるので評価も上がるような気がします。
この本は2023年にネットフリックスで映画化され、なんとジュリアロバーツやイーサン・ホークが主演をしたらしいのでぜひ映画も見てみたいと思うのですが、私的にはイマイチのこのお話になぜこれらの有名俳優たちが主演を承諾したのかが疑問なところです。もしかしたらこの本のポイントは話の筋というよりもこのような状況で人間はどのような行動をするのかという人間学的な観点から書かれている本なのかもしれません。もしかすると人間の心理を追求した本であり、それに共感した人たちが映画を作ったのかな?映像化されるとたまに本の内容と話が違くなっている時も多々あるのでまずは映画を見てみたいと思います。結末が同じなのかどうか気になるところです。
ということでこの本はそれほどオススメはしないけど色々考える部分もあり、なんとも言えない不気味な雰囲気もあり、話の始まりは興味深く、最後もドキドキする部分もあるで悪くはないのですが個人的には結末があまり好きではなかったというのが正直な感想です。実は最初2つ星にしていたのですが、この感想を書いているうちにまあ最後以外は悪くなかったなあと思い直し、2つ星から3つ星に変えました。細かく言えば2つ半という感じですが、半分星がかけないので3つ星にします。機会があればこの作者の他の作品も読んでみたいです。

