洋書コーナー

“Beautiful World, Where are you”by Sally Rooney

⭐️⭐️(2つ星)

今回はSally Rooneyの”Beautiful World, Where are you”の感想です。Sally Rooneyは”Normal People”や”Coversation With Friends”などで人気の作家さんですが私は彼女の作品を読んだことがなく、読んでみたいなと思いながらも時が過ぎてしまいました。”Beautiful World, Where are you”は彼女の3作目の作品です。

あらすじはアリスとアイリーンという2人の大学時代からの友達の友情とアイリーンの幼馴染であるサイモンとの関係、また彼女たちの恋愛事情、生きていく上での葛藤など複雑な人間の心を描いた作品です。この作品は話の中で起こる出来事よりも登場人物の心の変化や葛藤を主に描いた作品だと思うので、あらすじを書くのが難しい作品です。話の中ではこれといって大きな展開はないのですが、4人の主要な登場人物(アリス、アイリーン、サイモン、フェリックス)の複雑な心情や葛藤がうまく書かれていたと思います。

星は2つです。様々な人物のそれぞれ複雑な感情がうまく表現されていたと思うし、それを文章で表現するのは難しいことだと思うのでSally Rooneyはきっと複雑な人物を描くことが得意でそれができる文章力があるということはわかるのでなぜ人気かもわかるのですが、個人的に特にアリスとアイリーンが書きあう手紙の部分がつまらなく感じてしまい、またその手紙の部分が多いので全体的につまらなく感じてしまいました。彼女たちの性格や葛藤を表現するのにこの手紙のモノローグ的な部分が必要なのであろうことは理解できるのですが、残念ながら楽しむことができませんでした。

そして登場人物も誰も好感が持てず、共感もできなかったのでそれも評価が下がってしまった一因だと思います。特に個人的にはアイリーンが好きになれず、この人は俗に言ういろんなことをこじらせてしまうタイプの人だなと思いました。このような性格の人はきっとたくさんいるだろうし、きっと本人もなんでこうなってしまうのだろうとその部分で葛藤していると思うのでかわいそうだなとは思うのですが、なんでそこでそうしちゃうの??という理解不可能な行動に多々苛立ちを感じました。

アイリーンは自分でも言っているようにきっと自分が幸せになることが怖いのだと思います。自分が幸せになっていい人だと思っていないから幸せな出来事が起こるとそれがなくなってしまう前に自分でその幸せを壊してしまうというか。傷つく前に自分から傷つく状況を作らないために人を近づけないようなそんな感じがします。でもきっと誰よりも人に愛してほしい感情が強いのでそのギャップでうまくいかないことが多いのではないでしょうか。きっとこのように人生うまくいきそうな時またはいっているときに不安になって自分からそれを壊してしまうという人は世の中にたくさんいてだからこそこの本に共感できる人もたくさんいるのだろうと思いました。またそのような人たちにとってこの本は救いというか私だけじゃないんだという気持ちになれる大切な本になる可能性もあると思いました。が、個人的にはあまり刺さる部分がなく、読んでいて疲れるタイプの本でした。

しかし人気のある作家さんなので他の2冊も機会があれば読んでみたいです。この本は読み終わるのにすごく時間がかかってしまったので次はドキドキハラハラ系の続きが気になるような本をよみたいです。この本をお勧めするかと言われたら誰にでもおすすめはしないけれど、もし複雑な人間の心理について書いてある小説が読みたいという人がいたらお勧めしたいという感じの本でした。

ちなみに題名の”Beutiful World, Where are you”の元になったのはシラーの詩だそうで、そしてこれらのシラーの詩が好きなシューベルトがこれらの詩の歌曲集も作ったということをどこかで読みました。この話を聞くまでこの題名についてはあまり考えていなかったのですが、なんだか悲しくもあり、希望もあるような素敵な一文だなと思いました。この物語も題名と同じく、悲しくもあり、最後にはなんだか希望も感じさせる作品だと思いました。

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